『観光人類学におけるホスト側の「オーセンティシティ」の多様性について―岩手県盛岡市の「チャグチャグ馬コ」と「さんさ踊り」を事例として―』
『観光人類学におけるホスト側の「オーセンティシティ」の多様性について
―岩手県盛岡市の「チャグチャグ馬コ」と「さんさ踊り」を事例として―』
安藤直子 著
ゼミの先生に薦められて読んだ論文。
「オーセンティシティ」とは「真正性、本物性」のことで、観光人類学で長く論じられてきたホスト、ゲスト論について本論ではホスト側のオーセンティシティの追及の複雑性を明らかにすることでこれまで自明とされていた二項対立的な関係に限界があることを述べる。
本論では、2章で観光人類学におけるオーセンティシティを巡るこれまでの議論の過程をまとめており山下晋二や橋本和也などこの道の権威の名を拾うことができる。
本論の中心部分について、
「チャグチャグ馬コ」ではホスト側の役割の多様性を明らかにし、各自がそれぞれ自分こそ祭りに対する真正性を有する者であると自負している様子が確認できる。
「さんさ踊り」は祭りの形態について、見るもの、つまり観光客がいて初めて成立する祭りと考察されている。
5章の結論において筆者は、祭りに見るものが加わり構造化されることで、権威が生じると考察をしている。
なるほど、確かに利権を生む装置が近代になるにつれて作られる中で、祭りの担い手であるホスト側の構造にも変化が見られるというわけだ。
その変化を辿ってみることも重要なんじゃないだろうか。お金の動きとか、主体となる機関とか、地域とか。
『伝統行事を通した地域コミュニティの形成―諏訪御柱祭の一事例―』
『伝統行事を通した地域コミュニティの形成―諏訪御柱祭の一事例―』
小西恵美 著(専修大学社会関係資本研究センター研究員 ・経済学部教授)
社会関係資本研究論集第5号(2014年2月)
地域コミュニティをどういう風に維持、発展させるべきかという問いについて諏訪地域を事例に考察をした論文。
都市などの住民同士の関係が元々希薄な地域では行政が主体となり社会関係資本を構築していくことが有用かもしれないとする一方で、昔ながらの隣人関係がある諏訪地方などの場所では慣習、伝統を利用することでそれが果たされるのではと、筆者は主張する。
論文では伝統として御柱祭を主題に挙げ、御柱祭が地域へもたらす影響について考察している。
ここで言うところの御柱祭とは上社に限定したことであり、下社への言及は上社との比較に用いたことを除きほぼ無い。
この論文内では御柱祭が開催されるうえでの地域の関わり、担当についてまとめられているので参考にできる。
また、筆者は観光が御柱祭に与える影響について数行ではあるが言及している(別稿で論じると注釈にははある)
→地域内部でも御柱祭の観光化については賛否両論であり、賛成の地域はホテルなどの資本がある地域であった。
これは自分の論文内でもぜひ明らかにしたいところだ。
『観光化する社会 観光社会学の理論と応用』➀
『観光化する社会 観光社会学の理論と応用』 須藤廣 著
ナカニシヤ出版 2008年初版第一刷発行
第1章 観光と再魔術化する世界
観光の非日常性について
観光客の現実と観光地住民の現実の差異
p.7 A・シュッツ「限定的意味領域」…日常生活から区別された「もう一つの現実」
現実が疑似イベントに従う、つまり交通や情報伝達の発達によって観光は事前の情報通りに行うものとして扱われるものになり、聖性が失われた?
p.20「再魔術化」とは産業資本の外部にあった文化や人間関係を商品化、消費化することによってもたらされるもの
この章のキーワードは「再魔術化」、近代社会で脱魔術化が推進された反動とでも捉えておけばいいのかね。
『観光学ガイドブック』
『観光学ガイドブック』大橋昭一 橋本和也 遠藤英樹 神田孝治 編
ナカニシヤ出版 2014年初版第一刷発行
観光学研究のネタ本
諸領域で観光学という学問がどのように扱われているのかが簡潔にまとめられている
卒論のテーマ設定に窮したらとりあえず読んどくといい。
よく出てくるキーワードに「真正性」というものがある。
これは観光学研究のトップとも言えるようなキーワード。
気になった観光学研究の領域としては「ジェンダー」と「みやげもの」
また、観光の形態であるツーリズムも深堀したい。
巻末には観光学の有名な研究者と著作が載っているので参考にされたし。
観光研究をやる上で、観光のホストとゲスト、どちらに視点を当てるのかまだ決めあぐねいてるなあ。
卒論の進捗の場として
アウトプットとしての場として使用
読んだ論文の概略などをメモする事
たまに就職関連のまとめも