『観光人類学におけるホスト側の「オーセンティシティ」の多様性について―岩手県盛岡市の「チャグチャグ馬コ」と「さんさ踊り」を事例として―』

『観光人類学におけるホスト側の「オーセンティシティ」の多様性について

岩手県盛岡市の「チャグチャグ馬コ」と「さんさ踊り」を事例として―』

安藤直子 著

 

ゼミの先生に薦められて読んだ論文。

「オーセンティシティ」とは「真正性、本物性」のことで、観光人類学で長く論じられてきたホスト、ゲスト論について本論ではホスト側のオーセンティシティの追及の複雑性を明らかにすることでこれまで自明とされていた二項対立的な関係に限界があることを述べる。

本論では、2章で観光人類学におけるオーセンティシティを巡るこれまでの議論の過程をまとめており山下晋二や橋本和也などこの道の権威の名を拾うことができる。

本論の中心部分について、

チャグチャグ馬コ」ではホスト側の役割の多様性を明らかにし、各自がそれぞれ自分こそ祭りに対する真正性を有する者であると自負している様子が確認できる。

さんさ踊り」は祭りの形態について、見るもの、つまり観光客がいて初めて成立する祭りと考察されている。

 

5章の結論において筆者は、祭りに見るものが加わり構造化されることで、権威が生じると考察をしている。

なるほど、確かに利権を生む装置が近代になるにつれて作られる中で、祭りの担い手であるホスト側の構造にも変化が見られるというわけだ。

その変化を辿ってみることも重要なんじゃないだろうか。お金の動きとか、主体となる機関とか、地域とか。